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发表于 2005-6-19 15:06:00
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2-6 戦術的読書メモの作成
論文作成作業が進んで,論文の章と節の構成,文献リスト,戦略的読書メモ,さらに文献の重要度判断までできたとしよう。すでに述べたように,論文作成は,設計図を引く作業と情報処理(たとえば読書)作業とが並行的に進んでいる。読書についても,戦略的読書をする一方で,重要だと思われる文献の精読もされているはずである。 しかし,この段階になると,本格的な戦術的読書,つまり論文に使うことのできる資料や情報はないか,というはっきりとした目的をもった精読をすることができる。つまり,欲しいものを探すという目で文献や資料を調べるのである。必要な情報を発見すれば,それを利用することを前提にしたメモを作る。この点で戦略的読書メモと戦術的読書メモは異なっている。章と節の作り方についての個所で説明したように,章と節ができればそこでどのような情報が必要であり,どのような記述をしなければならないかがほぼ決まる。戦術的読書は,それを念頭に置きながら文献から必要な情報を意識的に選び出し,戦術的読書メモは,それを記録する。たとえば,次の読書メモを見ていただきたい。
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グリーン(安原義仁・成定薫訳)『イギリスの大学』(法政大学出版局, 1994)Vivian H.H.Green, The Universities (Pelican Books, 1969)第4章
19世紀におけるオックスフォードおよびケンブリッジ両大学の改革 56
-改革の背景 56
産業および商業の発達に伴う社会の全面的な改革の圧力,とくに高度の教育を受けた実業人に対する需要と効率的な統治機構の要請(官僚機構の拡張,帝国領土の拡大,学校数の激増)。大学は,唯一の人材養成機関であった。
-改革前のOxbridge 57
1.イギリス国教会の牧師養成機関である例
Trinity College, Cambridge(1831-40 413/1239, 1853-62 496/1388が聖職についている)。
国教会に就職できないものは知的専門職,行政関係に職を求める(その数は,増加の一途をたどる)。
2.univ.はcollegeの連合体であり,collegeの長を中心とする少数の集団(Oxford/Hebdomadal Board, Cambridge/Caput)が運営していた。
3.univ.は,入学登録料,学位取得料を課し,教授を任命するだけである。
4.collegeが教育の中心であり,教授の講義は学位取得のカリキュラムとは無関係(collegeのスタッフは,tutorとfellowである)。
5.collegeの教育は,水準が低く,それだけでは十分ではない。まともな教育を受けるには,coachのところに出向いて受験教育(学位のための)を受ける必要があった。
6.collegeの教師集団は,「流行遅れで安逸をむさぼる聖職者クラブ」61であった。
-改革への動き 63
1.1837年頃からその動きが始まる。外部からの改革要請が見られる。
2.19世紀はじめから古典学(Greats)と数学について優等学位(honours degree)試験が導入されはじめ,その試験の優等者の中からfellowが選出されるという傾向が現れる(しかし,教育の中心は,アリストテレスその他である)。
3.非国教徒の大学入学を認めようという提案はまだ承認されない(大学,議会共)。
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これは,19世紀イギリスの法思想を論じる場合に,大学がどのような影響を及ぼしていたのかを描く必要があるという判断に基づいて作成された戦術的読書メモである(すでに説明したように,書物自体がデジタル化されてコンピュータで利用可能になっていれば,いちいちタイプしなくても,コンピュータのコピー機能を使って,ポイントになる文を自分のファイルにコピーするだけで,この作業ができる)。
このメモにはいくつか特徴がある。まず,書物の著者,タイトルほか文献自体をそのまま論文で引用できるような形のメモにしてあることである。論文を書いている最中に,引用する本を探して書名その他を確認しようとすると,仕事が中断される。文章を書く作業は,相当な緊張感の持続が必要だから,この緊張感を乱すようなことはできるだけ避けたい。コンピュータのコピー機能を使うと,このメモから必要な部分を抜き出して論文の該当個所に貼り付けるだけで,論文中で文献を引用する作業ができるメリットがある。もちろん,作成済みの文献リストからコピーしてきてもよいのだが,このメモの場合,メモの作成者が「- 改革前のOxbridge 57」のように見出しをつけているので,ポイントがわかる上に,該当頁数が記録してあるので,文献リストによるよりも正確な引用ができるのである。
第二の特徴は,戦術メモを見ると,メモの対象にした文献の全体の論調や印象を思い出して,確認できることである。論文作成の場合には,たくさんの文献や資料に当たるので,読んだことすべてを覚えておくことはできない。戦術的読書メモがあれば,全体の話の流れを確認できるので,文献を適切に使うことができる。それに加えて,論文作成中に「あの話はこの本のどこに書いてあったっけ?」と思ったときに,デジタル情報化された戦術的読書メモを検索すれば該当部分を特定することができる。
第三の特徴は,戦術的読書メモを使うと,参考にした文献の文章に影響されずに執筆ができるという点である。戦術的読書の対象になるような文献は,優れた著者が書いており,説得力のある名文であることも少なくない。そうなれば,その文献を読みながら論文を書いていると,他人の文章に知らず知らずのうちに影響されてしまうことが起こる。言いまわし・話の進め方・用語など,他人の文章が自分の論文を占拠してしまうのである。それはできるだけ避けたい。戦術メモを使うと,もとの文章は直接見ないから,たとえば,「グリーンによると,19世紀の大学改革前のオックスフォードやケンブリッジには問題が少なくなかった。彼女は,問題点を6つほど指摘しているが,本稿との関係で注目されるのは,国教徒でなければ大学で学ぶことができなかったという点である。……」というような形で自分の文章の中に文献の議論を取り込むことができる。
長期的観点からして意味があるのは,コンピュータ上のファイルとして作成された戦術的読書メモは,将来にわたって利用可能な知的資源となることである。コンピュータの検索機能を活用すれば,ある特定の表現を含むファイルをすべて探し出すことができるし,その表現がメモにされているファイルの特定の個所を調べることもできる。戦術的読書メモは,あるはっきりした目的のために作成されているから,別の機会にそのままの形で利用できるとは限らない。しかし,必要に応じて,文献を調べ直す有益な手がかりであることは間違いがない。たとえば,日本の大学改革に関する文章を書く場合にも,19世紀イギリスの法思想を論じる目的で作成したイギリスの19世紀の大学に関するメモが,一定程度利用できるのである。
論文を作成するのに直接必要な情報を選び出すための方法は,コンピュータの使用に限られるわけではない。従来活用されてきたのは,書物につけられた索引である。詳細な索引がついていれば,ある特定のテーマに関係のある記述部分だけを選んで読むことができる。たとえば,人名索引の中にイェーリングというドイツの法律学者の名前があれば,その名前が出ている頁だけを調べることになる。著者がイェーリングについてどのようなコメントをしているかは,その部分についての戦術的読書メモをとっておけば,ある程度判断することができる。
文献の中から必要な個所だけを選び出して読むもう1つの方法は,目次の利用である。目次は,論文の骨組みを示すものだから,目次を参考にして,関係のありそうな章や節を拾い読みすることができる。このやり方に,すでに作成してある戦略的読書メモを組み合わせれば,相当程度戦術的な読書をすることができるのである。
2-8 文献の要約と批判
すでに説明したように,論文には,何らかの意味で「新しい」情報が入っていることが求められている。情報が新しいかどうかを判断する1つの方法は,これまでの議論を整理することである。というのは,これまで言われていることを確認できれば,自分の伝えようとするメッセージがすでに言われていることの繰り返しであるかどうかは判別できるからである。戦略的読書は,これまでの議論の到達点を知るための1つの方法であった。 もう1つの方法は,「批判」と呼ばれる作業である。批判といっても,文献の批判とは,その文献を悪しざまに言ったり,作者をこきおろしたりすることではない。その基本は,文献の作者が伝えようとするメッセージ(結論)とそれを導き出すために作者が用意したシナリオ(話の筋道)の間に矛盾がないかどうか,また話の運びを納得させようとして作者が提供する証拠や根拠が十分かどうかを確認することなのである。その点に問題がなければ,さらに,作者のメッセージと両立しないようなメッセージを考える余地はないかどうか,同じメッセージを引き出すにしても,もっとよいシナリオはないのかを考えることも文献批判に含まれるのである。
文献批判によって,対象文献のシナリオや論証の不十分さを明らかにすることができたり,よりすぐれたシナリオや証拠を提示することができれば,それは疑いもなく新しいメッセージである。つまり,文献批判は,論文の新しさと価値を示すための常套手段の1つである。
そこで,文献批判の具体的手順を理解するために,すでに解説した章と節の作り方を思い出していただきたい。そこでは,章と節を作るために,1,000字シナリオを18の単文に分解した。その上で,「ほんとうにそうなの?」といちいち念押しをするような性癖の人を納得させるためには,どのようなデータ・証拠・根拠が必要かをそれぞれの単文について考えた。この手順は,そのまま文献批判に応用することができる。
文献批判の場合,対象とする素材は完成した論文などであるから,シナリオの形にはなっていない。そこで,文献を分析して,その著者の伝えようとしているメッセージとそれを導き出しているシナリオを読み取ることがまず必要になる。それが,要約と呼ばれる作業である。
要約を作るには,まずその文献のメッセージ(つまり結論)を確認する(これは戦略的読書である程度確認できているはずである)。次に,その結論に読者を導くためのシナリオを抽出するのだが,きちんと設計図を引いてから論文を書くような慎重な著者の論文であれば,シナリオは,章や節の見出しをつないでいく方法で比較的容易に抽出することができる。なぜなら,著者は,読者をぐいぐい引き込んでメッセージを受け取らせようとして筋書きを書いているはずだからである。論文が序論を除いて5章からできあがっていれば,著者は,メッセージを引き出すために5つの小話をつないでいると考えればよい。見出しは,それぞれの小話の要約であるから,見出しがつながっていくようにシナリオをまとめればよいのである。
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