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<京大医学部資料館>731部隊の展示撤去 開館後間もなく
京都大の基礎医学記念講堂・医学部資料館=京都市左京区で2014年5月20日、宮川佐知子撮影
今年2月に開館した京都大医学部資料館(京都市左京区)で、細菌兵器を開発していたとされる旧陸軍731部隊について説明した展示パネル2枚が、開館後、間もなく撤去されていたことが分かった。資料館の担当者は「通常の展示替えの一環」と説明しているが、ほかに撤去した展示物はほとんどなく、医学関係者からは「医師の戦争責任の隠蔽(いんぺい)ではないか」という声も出ている。
資料館の担当者によると、撤去されたのは「京都大学医学部病理学教室百年史」(2008年)の記述を引用したパネル。京大出身の石井四郎陸軍中将らによる731部隊の創設経緯などに触れ、「京都大医学部としても検証が必要」などと言及している。
同資料館は2月11日に完成式典が開かれ、杉田玄白の解体新書や野口英世の論文の複製も展示している。
担当者は「パネルは2月中に撤去したが、展示替えの一環だった。何か事実を隠そうという意図はない」としている。写真パネル以外で撤去した展示物は、所有者から返還要請があった医療器具だけだという。
医師の戦争責任を考える運動を続ける京都府保険医協会の垣田さち子理事長は「731部隊の検証に関しては、医学界の一部で消極的な声も強い。撤去の経緯が不透明で、事実を隠す意図があるのではないか」とし、協会として大学側に問い合わせる方針。
百年史の中で、731部隊について執筆した杉山武敏・元京大教授は「冷静に誇張も隠蔽もなしに、京大医学部が戦争に協力した歴史として記述をした。撤去された事実は聞いておらず、コメントできない」としている。【鵜塚健、藤田文亮、宮川佐知子】
◇731部隊
旧日本陸軍が1933年に創設し、中国東北部(旧満州)を支配した関東軍の細菌戦部隊「防疫給水部」の別称。京都大医学部出身の石井四郎・陸軍軍医中将が部隊長で「石井部隊」とも呼ばれていた。多くの研究者が参加し、ペスト菌などの細菌兵器や毒ガスを開発。中国人捕虜らに人体実験を行い、多くの犠牲者を出した。