● 重さについて |
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テニスは、プレー中ずっとラケットを手に持って振り続けるスポーツなので、重量感や操作性はラケットを選ぶ際の大きなポイントとなります。
また、重さについての誤解がプレーに悪影響を与えることも少なくないので、正しい知識を身につけることはとても大切です。 |
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● 重さ関連の3つの数値 |
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テニスラケットの重さに関連する数値は3種類あります。一つは何グラムという「重量」で、二つめは「重心の位置」(バランスポイント)で、これはグリップエンドから重心位置までの距離をミリ単位で計ります。
三つめは通常「スイングウェイト」と呼ばれているもので、グリップエンドを中心にしてラケットを水平に振り子運動させて慣性モーメントを測ります。数値的には250~330(kg×c㎡)くらいの範囲になります。
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● 重量 |
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ラケット全体で重さがどれくらいあるかという数値が重量ですが、その重量がラケットのどの部分に配置されているかによって、操作感やプレーへの影響が変わるため、重量の数値だけではラケットの操作感を判断することができません。
テニスラケットは約70cmと長さのあるものなので、同じ300gの重量でも、それがラケットの先のほうにあるケースと手元寄りにあるケースでは、振ったときの重量感は全く別物になり、打球感やボールの飛びも変わります。トンカチの柄を持つのとヘッド部分を持つのでは、振った時の重量感が大きく変わるのと同じです。
ラケットの重量はカタログにも記載されており理解しやすい数値のため、ラケット選択の際に指標となりやすいようですが、この数値だけでは振った時の重さは分かりません。何グラムという重量の数値だけで、操作感や振ったときの重量感をイメージしてしまうのは危険です。 |
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● バランスポイント |
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バランスポイントは、静止状態の重心の位置をグリップエンドからの距離で表した数値です。この数値が大きいほど重心位置がグリップから遠くなるということで、先に書いた「重量」の配置されている位置を推定する目安として使われます。
ただ、これはあくまで静止状態の計測値なので、動かして使う場合はあまり役に立たないこともあります。
下の図は、「重量とバランスポイントが同じでも、重量配分は大きく変えることができる」という例です。この2つでは振った時の感じは大きく変わりますが、重量とバランスポイントではその違いを表現することができません。
また、昔からバランスポイントに関連して、トップヘビーとかトップライトとかの言い方がありますが、バランスポイントの数値が大きいものが必ずしもトップヘビーとはいえません。重心がトップ寄りにあるということは、トップ側が重いケースもありますが、グリップ側が軽いというケースもあります。トップ側とグリップ側の重量を比較するような数値ですので、この数値でトップ側がどの程度重いかを知ることはできません。
ラケットのトップ部分がどの程度重いかを判断するには、次に出てくるスイングウェイトの数値のほうが有効です。 |
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● スイングウェイト |
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ラケットの重さに関連する3つの数値の中で、プレーに与える影響が最も大きい数値はスイングウェイトです。 手に持って使うギアとして最も大事なのは、静止状態で持っている時の重量感や静止している時の重心位置ではなく、動かした時の重さの感じ(取り回しの重さ)です。
ラケットはグリップ部分を持って振り回して使うものなので、グリップを中心にしてラケットを振って計測するスイングウェイトの数値が、操作性を判断する上で一番実用性が高いといえます。
静止バランスの計算は、基本的に「重量×距離」になりますが、スイングウェイト(慣性モーメント)の計算の基本は「重量×距離の二乗」となり、グリップからの距離の持つ意味が格段に大きいのです。
その一例として、グリップテープとガードテープを取り上げてみます。グリップテープとガードテープはそれ自体の重量はそれほど変わりませんが、グリップから一番遠いところに貼るガードテープの場合は、グリップ部分に巻くグリップテープと異なり、スイングウェイトを大幅に増加させます。そのため、そうした特別の意図で貼るのでなければ、ガードテープの使用はできるだけ避けたほうが安全です。
スイングウェイトの数値が大きければ取り回しが重く感じる代わりに、飛んでくるボールに対しては安定性が高く、打ち負けずに衝撃感も小さくなります。
その反対に、スイングウェイトの数値が小さいと取り回しは軽いのですが、強い打球に打ち負けやすくなり、インパクトの衝撃感も大きくなります。
同一モデルでも大体20~30ポイント程度のバラツキ(個体差)があり、その数値によって使い勝手が大きく異なるため、ラケットを選ぶ際にはスイングウェイトの確認が不可欠だといえます |